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中東の悲劇に思う

今日(5月17日)の朝日新聞「天声人語」は、パレスチナの詩人、1988年のパレスチナ独立宣言起草者でもある、マフムード・ダルウィシュ(1941~2008)の、「ユダヤの子への詩」を紹介していた。

  きみには家があるけど、ぼくにはそれもない。
  きみにはお祝いがるけど、ぼくにはない。
  なぜいっしょに遊んじゃいけないのだろう。(四方田犬彦訳『壁に描く』)

 この詩人は、1941年、英国統治下のパレスチナ北部のビルワという村に生まれた。その6歳の1941年5月、この地にイスラエル共和国が建国され、人々はイスラエル軍によって追い出された。悲劇が始まり、今、再び新たな悲惨が始まろうとしている。
 この詩の悲しみは強く胸に迫る。私がこの詩人の詩を読むのは初めてであるが、之を読んで、高校時代、世界史の授業で、担当の稲川誠一先生手製のプリント資料にあった英国の詩人バイロン(1788~1824)の詩を思い出した。「野の羚羊(かもしか)」という詩だ。
その一節。

  かの野べに影おとす棕梠(しゅろ)の木だに、
   四散せるイスラエルの民らに較(くら)ぶれば、幸いいやまさる。
  棕梠の木は、その一木ごとに根を張りながら、
   いまなお孤高の優美に生い立てればなり。
  棕梠の木、おのが誕生の地を離(か)るることなけん。
  棕梠の木、異郷の地にさまよい生くることなけん。

  されど、われわれは、よろぼいながらさまよい行き、
   ついに異邦にて死に果つるべし。
  されば、われらの父祖の骨埋(う)もるる土に
   われらの骸(むくろ)の横たわることなかるべし。
  われらの伽藍には石ひとつ置かるることなけん、
  「嘲笑」のみ、サレムの玉座に坐せる。(斎藤正二訳) 
 
 『旧約聖書』にみる、イスラエルの民の悲しみを、深くまた美しく歌いあげたもの、今もって忘れるができない詩だ。

 「天声人語」は、ダルウィシュの、

  歴史は犠牲者も英雄も嘲笑う
  彼らに一瞥をくれて 過ぎてゆく
  この海はわたしのもの。
  この新鮮な大気も。

を引いて、「残された詩の一節が、私たちの胸に静かに迫る。平和が欲しい。殺戮ではなく。」と結んでいる。 
 この地に平和を実現することは至難の業であることはわかりきっているが、後世のためにも、どうかこれ以上憎悪と怨嗟の連鎖が拡大しないように、世界が力を合わせることを願ってやまない。

党名改変のお勧め! 「日本維新の会」から「日本保守の会」へ

4月12日、時事通信は、以下の、「旧宮家養子案実現を 皇位継承で意見書 維新」と題する記事を配信した。

 日本維新の会は12日、皇室制度調査会の会合を衆院議員会館で開き、安定的な皇位継承の在り方に関する意見書をまとめた。

 政府有識者会議の報告書で示された案のうち、旧宮家の男系男子が養子として皇籍に復帰する案を「特に高く評価できる」とし、「皇室典範の改正により、安定的な法制度として実現すべきだ」と記した。

 女性皇族が結婚後も皇室に残る案については「皇位継承資格を女系に拡大することにつながるのではないかと懸念する声があることにも十分留意する必要がある」と指摘した。週内にも衆参両院議長に提出する。

 同調査会の座長を務める藤田文武幹事長は記者団に「養子縁組案をぜひ具体化させていくべきだ」と強調。維新関係者は「女系天皇容認論者のいる自民党よりも維新が保守だと示せた」と語った。

 この配信だけでは、同党意見書の内容を評論することは慎みたいと思うが、記事の最後の、「女系天皇容認論者のいる自民党よりも維新が保守だと示せた」という「維新関係者」の発言が本当ならば、一層のこと、党名を、「日本保守の会」にされたらどうだろうか。 
 さらに、「意見書」を拝見することがあれば、「日本守旧の会」の党名を献上することになるかも……。

河野防衛大臣の「皇位継承問題」発言への共感と期待

『朝日新聞』8月25日「女系天皇含めた検討、河野防衛相が言及」(寺本大蔵記者)によれば、河野太郎防衛大臣は8月23日夜のニコニコ動画のインターネット番組「防衛大臣 河野太郎と語ろう」で、皇位継承問題について以下のように語ったという。

 ①「天皇家は男系で千年以上きている。続くなら男系がいい」と強調したうえで、「雅子さまや紀子さまを見て、皇室にお嫁入りしてくれる人が本当にいるのだろうか」と述べ。 ②「女性宮家」の創設を前提として、「(男系)男子がいなくなった時は、愛子さまから順番に、女性の皇室のお子さまを天皇にしていくというのが一つある」。

 また同紙8月26日「皇位継承議論『早い段階で』 河野防衛相 女系天皇巡り言及」(寺本大蔵記者)によれば、河野氏は25日の記者会見でも、「現皇室で男系を維持していくには、かなりのリスクがあると言わざるを得ない」と述べ、女系天皇も含め検討する必要があるとの認識を重ねて示し、「国民に皇統の危機をご理解いただき、なるべく早い段階で考えていただくもの必要ではないか」と語った。
 また、8月24日17:06配信の『毎日新聞』「河野防衛相、女系天皇『受け入れ検討を』 『内親王のお子さまを素直に次の天皇に』」よれば、23日夜のインターネット番組で同氏は、旧宮家の皇籍復帰については「600年前に天皇家から分かれた方たちを戻して、本当に国民に受け入れられるのか議論がいる」と疑問を呈したという。

 現在の皇室法によれば、皇位の継承は男系男子に限定されており、また、女性皇族は結婚されれば皇籍を離れなければならない規定となっている。前者については、皇室も一夫一婦制を採られている以上、男子のご誕生が得られない場合があることは自然で当然である。後者の儘でいけば。やがて皇室には悠仁親王殿下お一人という危機に直面することは誰の目にも明らかである。

 だからこそ、国会は、「天皇の退位等に関する皇室典範特例法」(平成29年6月9日成立)を採択するに当り「附帯決議」を採択し、政府には「安定的な皇位継承を確保するための諸課題、女性宮家の創設等について……全体として整合性が取れるよう検討を行い、其の結果を速やかに国会に報告すること」を要請し、また国会に対しては、この「報告を受けた場合に於いては」、「安定的な皇位継承を確保するための方策について『立法府の総意』が取りまとめられるように検討を行う」ことを確認したのであった。
 
 報道によれば、政府は何名かの有識者・専門家といわれる人々に内々のヒヤリングを行ったということであるが、この「附帯決議」に何ら応えるには至っていない。安倍内閣の怠慢、否、サボタージュは後世の歴史により厳しい裁断を受けることは必至である。

 河野氏は「国民に皇統の危機をご理解いただき、なるべく早い段階で考えていくのも必要ではないか」と語ったということであるが、国民の多くは既にその危機を強く認識しているのではないか。それがゆえに国会は「附帯決議」を行ったのあろ。

 現行の法制によれば、皇室典範は一法律として位置づけられている。安定的な皇位継承確保、ならびに皇室の永続性を確保するために典範の改正が必要であれば、それは立法府のみが成し得る機能である。議院内閣制における行政府・内閣は、立法府・国会と深く強い関係性を有するもの、内閣を作り出すのは国会である。国会が、典範改正の準備を行い国会に提案すべき立場にある内閣に対し、事態を深刻に受けとめるのであれば、国会が能動的に内閣に働きかけることは当然の責務である。この点について、国会の怠慢もまた厳しく追及されなければならないことである。

 国政選挙に際し、メディアはこの問題についても立候補の見解を問うている。面白いのは、私の地元についてであるが、野党の立候補者は意見を明らかにするのに対し、与党の立候補者はコメントしないことである。これが「一強」のもとの政治状況かとも情けなくなるが、それらの人々の政治に対する、つまり国家・国民にたいする非誠実な姿勢を私は忘れないであろう。

 この国家未曾有の危機に対し、徹底して怠慢でありサボタージュを続けた安倍得内閣の終焉は近い。今こそ両院の国会議員は、国民の皇室への溢れるばかりの親愛の心と現状への憂慮を深く受けとめ、真剣にこの重大で一刻の猶予も許さない重要な課題を解決のために果断な処置を執られるよう願ってやまない。

 河野太郎防衛相の時宜を得た発言に対し、強い共感と感謝を表明したい。そしてなにより、同氏の強いリーダーシップにより、この重大課題が速やかに解決の道に進むよう、ご尽力を心から願うものである。                 (令和2年8月30日)

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